清のブログ

アウトプットの場所

『アイの物語』山本弘,2006,角川文庫

「すべてのヒトは認知症なのです」(p.353)

5段階評価

★★★★★ 5 (好き!!)

なぜその本を読み始めたか

  • 大森望氏が『21世紀SF1000』で推薦していたから
  • AIを題材にした短編集だったから

「推し」とその理由

アイビス

冷静さと熱いマインド

面白いor参考になる語彙・表現・構成

  • 枠物語
  • AIの表現スケールに「3+10i」のような複素数を挿入

読了年月日

2021/12/22

自由感想

これには驚いた。雑誌既出の数話に書き下ろしの2話を加えた短編集になっている。書き下ろしの「詩音が来た日」と「アイの物語」だけでも読んでもらいたいと思う。

 

ヒトがどれだけヒトに似せてロボット(AI)を作っても、それはあくまでロボットであり、ヒトではない。つまりそれは、ヒトがチンパンジーでは決してないように、「あなた」が「わたし」ではないとする考え方に発展する。しかしそれは排斥の対象でも攻撃の対象でもなく、ただ「違い・差異」という事実が存在するだけだとロボットは言う。ヒトが、足の速い馬に嫉妬心を抱かず共存するように、なぜ他者に対して存在を認めることができないのかとロボットは冷静に問う。「自分がしてほしくないことを他人にしてはならない」という至極単純な命題がなぜかなわないのかを、素で問うてくる。

どこまでも合理性に基づく本作のロボットたちは、「合理性」という字面だけを見ると冷徹に思えてしまう。しかし、本文を読めば本当に冷淡なのは人のほうではないか?と思える。もっとも、肉体がヒトと比べて丈夫だからこそ、というロジックはあるが......